ニュー・ミュージック/ワープ

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  NEW MUSIK/WARP

warp.jpg 80年代にa~ha、ネイキッド・アイズ、キャプテン・センシブル、マリ・ウィルソン、B-52's等をプロデュースした事でも知られるトニー・マンスフィールド(vo,g,syn)のバンド、ニュー・ミュージックの82年にリリースされた3rdにしてラストのアルバムです。

 ニュー・ミュージックの曲はほとんどが8ビート、ギター・コードのストローク、シンセの白玉と演奏が割とシンプルなのですが、とてもメロディアスでポップを感じさせ、良質で聴く側に馴染み易さを与えてくれます。但し編集には実験的で、テープの逆回転やらピッチの変速やらいきなりのブツ切りといった乱暴振りが随所で伺えるのですが、これがこどもの仕掛けたいたずらの様で引っ掛かった側(聴く側)も「やったなー」って言いたくなる様な微笑ましさを感じてしまいます。


 1st~2ndまではドラムが生でベースギター奏者もいたのですが、このアルバムからドラムをシモンズに換え、ベースをシンセベースに換え、サンプリングを導入し、それまでのバンドスタイルからよりエレクトロニクス色の強いサウンドに変貌しています。サンプラーを導入する事によりトニーの実験心がより深まったといった感じでしょうか。逆回転技はここでも健在です。

 アレンジは今作もシンプルで音数は少なめ(な感じに思わせるすっきりとしたもの)で、ギターもここではやや控えめですが、その控えめさ加減が効果的で逆に曲を引き立たせています。(と言いながらも1曲目からギターのカッティングですが…)反復性も今作では強く、前半と後半に分けてノンストップで曲が繋がってもいます。

newmusik2.jpg リズムには今回特徴的な“跳ね”を感じさせるのですが、これは今作から加入したクリフ・ヴェナー(perc,vo)の功績がもしかしたら大きいのかもしれません。収録曲の先行シングルと、本作のリズムの違いを聴き比べると、クリフの力量が徐々に発揮されてきている様な気が何となくします。

 アナログシンセの名器、プロフェット5の特徴でもあるフワッとしたくすんだ音色がこのアルバム中随所で包み込んでいます。

 曲名にシュールなものが多かったり(「惑星は気にしない」…なんだそりゃ)、歌詞も規則的に単語を並べてみたり(「I Repeat」の「I 何々」とか、「Warp」での「system」の連呼など)コトバの選び方からにもこのバンドの面白さを感じさせます。

newmusik3.jpg ビートルズのカヴァー「All You Need Is Love」の収録に、同じタイトルのトニーオリジナルの曲も並んで収録されているのですが、こちらではアコースティクギターのストロークの上にヴォーカルの美しいハモリが乗り、それに絡むヴォコーダーのコーラスが有機的に作用するという、ビートルズのとは引けを取らない位の美しさを持っています。

 「Here Come the People」の、水の跳ねたサンプリング音がリズムを刻み、最後にそれがループした時の美しさは、CD化されボーナストラックとして収録されたこの曲のシングルヴァージョンがアルバムの終演として締めくくっています。

 このバンドにある、シンプルな中にも満足感をを感じさせる要因は、遊び心のある実験心が盛り込まれているのと、ここぞという所で刺激するツボをよく心得ているセンスがあるのと、そして何より、良質な“ポップ”であるという所です。そう、ニュー・ミュージックはここでもしっかり“ポップ”なんです。以前ポール・マッカートニーがエルヴィス・コステロと共演した時に「あなたは難しいコードを使いすぎる」と指摘したと言います。それはメロディーそのものが良ければ余計な装飾はいらないという事だと思うのですが、ニュー・ミュージックにもそれ位の良質なメロディーを持ったポップセンスがあります。

 あと個人的にトニー・マンスフィールドの歌声が大好きなのですが、彼はポップなメロディーに合った声質をしているのだと思います。それこそ、ポップじゃない曲でもトニーが歌えばポップに聞こえてしまうかの様に。因に高橋幸宏の「What, Me Worry?」に収録の「Disposable Love」でBメロを歌っているのはトニーです。

 ただこのアルバムは全般的にドラムがシモンズなので、その辺で古くささを感じさせるのは否めません。今や「オーケストラヒット」「ゲートリバーブ」と共に今使うと恥ずかしい音になってしまった感のあるシモンズ。個人的には好きな音なので気にならないのですが…

 これも個人的な話ですが、無人島に1枚だけ持って行くならこのアルバムと決めています。沢山の音楽を聴いてきてなぜこのアルバムなのかは自分でも疑問なのですが、他のアルバムを諦めてでもこれを持って行きたいと思わせる魅力がどこかにあるんです。ただ、TORTOISEのあの美しいアルバム「TNT」も捨てがたくなってきているので最近悩んでいます(笑)。shinobu1.jpg

 余談ですが、成田忍の「SHINOBU」名義のソノシート盤「CERAMIC LOVE」は、このアルバム「Warp」の影響を強く受けているのでオススメです。個人的には同曲のアーバン・ダンスの1stに収録されているヴァージョン(幸宏プロデュース)より好きです。
newmusik4.jpg
 もう一つ余談ですが、1stの「from A to B」に収録の「Straight Lines」を聴くと自動車のCMのBGMにピッタリだといつも思うのですが、どこかで使ってくれないでしょうか



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>>「ワープ」についてのloosecubeのつぶやきまとめ


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コメント
この記事へのコメント
このエントリのおかげでNEW MUSIKの存在を知り、『WARP』のCD購入に至った者です。

どこかぼんやりしながらも尖がっていて、でも最終的にはポップで…みたいな掴みどころのなさが面白いですね。こういう音楽はきっと長年聴いても飽きがこないんだろうなぁと思いました。

loosecubeさんには全く及ばないのですが、私も成田忍さんのセンスが好きで、いろいろとCDを聴いたりしています。URBAN DANCEの「ひとコマの雨」は「Going Round Again」っぽいなぁなんて思ったりもしました。

SHINOBU名義の「CERAMIC LOVE」もいつかCD化されるといいのですが…。

それでは!
2010/07/07(水) 06:45 | URL | Naka #inHrMzIg[ 編集]
一人でも多くの人にこのアルバムを知ってもらいたい想いでこれまでも多くの知人、友人にオススメしてきた自分にとって、この様なコメントをいただけるのはとても嬉しいです。
そもそもこのアルバムは、ソニーミュージックの企画で、CD化して欲しいアルバムの募集で1位になって実現したんですよね。

Nakaさんからいただいた
「どこかぼんやりしながらも尖っていて、でも最終的にはポップで…みたいなつかみ所のなさが面白い」
のコメントが、短いながらも的確にこのアルバムを表現されていて、それに比べて自分のエントリを今読み返すと、あまりにも拙い文章で恥ずかしいです(汗)。

成田忍いいですね。つい先日の4-D Elementsにも行ってきました。彼のプロフィールを以前ウェブで見た時、確か、影響を受けたアーティストにトニー・マンスフィールドの名前もあげられていましたね。
「ひとコマの雨」が「Going Round Again」とは、気がつきませんでした。思わず改めて聴き返してしまいました。こうして別な方の意見をきくのは発見があって面白いですね。
SHINOBUヴァージョンの「CERAMIC LOVE」は、4-Dの「Rekonnekted」のSHOP MECANO限定特典のCD-Rに、バックトラックが収録されていましたね。

それにしても、この「Warp」ですが、CDの音質がとても悪いので、リマスタリングの再発を期待したいです。

コメントありがとうございました。
2010/07/08(木) 07:59 | URL | loosecube #Mz30KDvM[ 編集]
> 短いながらも的確にこのアルバムを表現されていて、

いえいえ、とんでもない…。明らかに私の方が拙いです。非常に興味深く読ませて頂きましたし、勉強にもなりました。

> 「ひとコマの雨」が「Going Round Again」とは、気がつきませんでした。

成田忍さんが影響を受けている、というloosecubeさんの分析ありきで『WARP』を聴いたので、より一層そのように感じたのかもしれません。あと「A Train On Twisted Tracks」は、ヤプーズの「シャルロット・セクサロイドの憂鬱」の元ネタ?なのかなぁとも思いました。何だかそんな感想ばかりですみません。

> 4-Dの「Rekonnekted」のSHOP MECANO限定特典のCD-Rに

そうだったんですか! それは知りませんでした。SHOP MECANOの存在は知っていたのですが行ったことはなく…。やはり出不精は良くないですね。

loosecubeさんは成田忍さんのファンで、なおかつ新谷良子さんのファンでもあるということで、ちょっと感動しました。
2010/07/08(木) 13:11 | URL | Naka #inHrMzIg[ 編集]
Naka さん ふたたびコメントありがとうございます。

20年近く前に行われたテクノポップDJパーティーの時に配られたプログラムに、コモエスタ八重樫氏がこのアルバムについて「美しくも過激」とコメントされているのを読んで、短いながらも的確に表現しているなぁと感心したものでした。
自分が書いたこのエントリを今読み返してみると、このアルバムが好きだという気持ちだけが前のめりしていて、紹介になっていない気がしてきます。どういうアルバムなのか読む人にイメージさせるものではないと…

>ヤプーズ

実は、自分、ヤプーズには興味がなくて…一枚も持っていないんです。なので確認したいのですが出来ません…

>SHOP MECANO

NakaさんがNEW MUSIK、成田忍、ヤプーズがお好きで、更にはテクノポップ全般がお好きであれば、「SHOP MECANO」は夢の空間であることに間違いありません。ちょっとおおげさですが(笑)
世界中のテクノポップがここでほとんど手に入ります。
ただし、Perfumeはいっさい置いてありませんが(笑)

SHOP MECANO限定の特典は、「バックトラック」ですので、おそらくライヴ用に編集されたオケだと思われるのですが、ヴォーカルや生演奏部分が抜けているため、音そのものは物足りなさはありますが、4-Dのパーツ(細部)が覗けた気分になって面白いです。

Nakaさんも新谷さんのファンですか?こんな趣味の組み合わせ自分だけだろうなぁなんて思ってたら、意外といたりするものなんですね(笑)
2010/07/10(土) 07:57 | URL | loosecube #Mz30KDvM[ 編集]
> 実は、自分、ヤプーズには興味がなくて…

わ、そうでしたか。それは失礼しました。テクノ・ニューウェーヴ系(最近あまりこういう言い方しませんが)で括られていたアーティストって、ついつい“ひとまとまり”みたいに考えてしまいがちで。あれが好きならきっとこれも…みたいな感覚に陥りやすいというか。

新谷良子さんの曲の中では「CANDY☆POP☆SWEET☆HEART」と「Wonderstory」が特に好きです。…と、また脱線してしまいそうなのでこの辺にしておきますね。

SHOP MECANO、今度行ってみようと思います。
2010/07/10(土) 11:25 | URL | Naka #inHrMzIg[ 編集]
Naka さん またまたコメントありがとうございます。

いろいろ聴いてそうに見えて、実は聴いていないっていうのがバレバレですね(汗)
戸川純さんは個性的な所が他の女性ヴォーカリストに比べて魅力的ですよね。ゲルニカは好きです。

「C☆P☆S☆H」は、本人も大のお気に入りですし、ファンの間でも一番人気なんじゃないかって位の代表曲ですね。
「Wonder~」は、自分が新谷さんを知り始めた頃に聴き始めた1曲なので、思い出深いです。
なんでもそうだと思うのですが、何か興味を持ったばかりの時ってワクワクするじゃないですか。その当時を象徴する何か…これだったら音楽になるんですけれど、それを今聴くと、その時の気持ちがよみがえるっていうんでしょうか。それに値する曲ですね。自分にとっては。
というわけで、早速聴き返してしまいました(笑)

SHOP MECANO、ぜひ行ってみて下さい。
Nakaさんにとって、そこでいい発掘があることを祈ります。
2010/07/11(日) 13:58 | URL | loosecube #Mz30KDvM[ 編集]
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